脳梗塞で障害年金を受け取ることができる場合
1 脳梗塞での障害年金の受給
障害年金申請との関係では、脳梗塞それ自体が障害とされるというわけではありません。
もっとも、脳の損傷等によって、様々な後遺症が残る場合があります。
具体的には、記憶力の低下や人格の変化、感情の抑制ができなくなるといった症状が現れる場合があり、このような脳損傷に起因する障害を、「高次脳機能障害」といいます。
また、比較的現れやすい後遺症としては、四肢の麻痺、視力の著しい低下等が挙げられます。
障害年金の認定基準は、基本的に病名等に対してではなく、怪我や病気による日常生活や就労への支障の程度を評価するものとされており、脳梗塞の場合も同様に、このように残存した症状に対して等級の重さが判断されることになります。
2 障害年金申請における脳梗塞の取扱い
多くの障害年金申請の場合では、初診日から1年6か月経過した時点を障害認定日とし、その時点の症状の状態をみて、障害年金の受給を判断することが基本となります。
その場合、障害年金が実際に受給できるのは、障害認定日が属する月の翌月分からになります。
これに対し、脳梗塞を含む脳血管疾患の場合は、初診日から6か月経過した日以降で症状固定と認められる日(初診日から1年6か月以内の場合に限る)を障害認定日とするという、例外的な取り扱いとなっています。
症状固定というのは、それ以上治療を継続しても症状の改善が見込めなくなったと考えられる状態のことをいいます。
例えば、リハビリ等を続けても、これ以上四肢の麻痺状態に大幅な改善が見込まれなくなったといえる状態です。
症状固定に至っているかどうかを判断するのは基本的に治療中の医師となります。「6か月経過した日以降で症状固定と認められる日」ですので、必ずしも初診日から6か月後というわけではありません。
初診から6か月を経過した時点以降で、担当の医師に病状や経過について確認していただくことになろうかと思います。
3 障害の程度について
上記1のとおり、脳梗塞になると、様々な後遺症が残る可能性があります。
障害年金の申請は、8種類ある所定の診断書の書式に従って、医師に申請用の診断書を作成してもらう必要があります。
そのため、例えば、視力の低下であれば眼の障害用の診断書、四肢麻痺であれば肢体の障害用の診断書を作成してもらうことになります。
それほど複雑な分類ではないかと思いますが、誤って異なる書式の診断書等を医師に渡しても書いてもらえないということもありますので、注意が必要です。
症状によっては、診断書の作成を依頼する前に十分に準備をした方がよい場合もあります。
視力の低下については、視力が低下しているか否かは視力検査の結果によって0.5、0.01等と数値化されます。一定の数値よりも低い(視力が低下している)検査結果がでれば、それに応じた障害年金等級が認定されることになります。
これに対し、高次脳機能障害の症状である感情抑制がきかないことや、物忘れが激しくなったこと等は、数値で測ることができるものではありません。
高次脳機能障害については精神の障害用の診断書を作成してもらうことになりますが、その際には、脳梗塞になる前と後の状態を知るご家族の方を中心に、脳梗塞前後でどのような違いがあり、日常生活においてどういった支障が出ているのかについて、診断書を作成する医師にしっかり伝え、理解していただくことが重要となってきます。