生活保護を受給されている方の債務整理について
1 生活保護受給者の債務整理
すでに借金がある状態で返済ができなくなり、収入がなく生活費の確保も難しいため生活保護を受けることになった、という方もいらっしゃるかと思います。
生活保護を受給している場合は、どのように借金の問題を解決すればよいでしょうか。
2 個人再生や任意整理は難しい
⑴ 生活保護費と借金返済
給付を受けた生活保護費の使途についての具体的な法規制は定められていませんので、生活保護費を借金返済に充てること自体が不可能というわけではありません。
しかし、生活保護の制度趣旨から考えて、もともと最低限の生活を保障するという趣旨で税金から支給されている生活保護費を、返済に充てることが許容されるかについては別途問題となってきます。
⑵ 生活保護の種類
生活保護の種類は、法律上以下のようになっています(生活保護法11条1項)。
- ① 生活扶助
- ② 教育扶助
- ③ 住宅扶助
- ④ 医療扶助
- ⑤ 介護扶助
- ⑥ 出産扶助
- ⑦ 生業扶助
- ⑧ 葬祭扶助
参考リンク:厚生労働省・生活保護制度
⑶ 返済前提の債務整理は難しい
上記のうち、借金返済に充てられる可能性として考えられるのは「生活扶助」に含まれるかどうかというところですが、同法12条において、生活扶助は、「衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの」(同上1号)とされています。
借金返済が解釈によって「生活の需要を満たすために必要なもの」とまでいえるかと言われると、解釈論としてはやや厳しいように思われます。
そうなると、生活保護費を借金返済に充ててしまった場合、不正受給と判断され、生活保護の打ち切りとなる可能性もあります。
したがって、返済を前提とする個人再生や任意整理による借金問題の解決は基本的にできないと考えられます。
3 自己破産による解決
上記の問題があることから、生活保護受給中の方の債務整理の方法としては、通常自己破産を選択することになります。
自己破産手続きの場合には、免責決定を受けた後の返済は予定されていないため、上記のような問題が生じません。
弁護士費用についての懸念もあるかと思いますが、生活保護受給中の方の場合には、法テラスを利用して費用を工面し、手続きを進めることができます。