不動産しかない場合、遺産分割はどのようにしたらよいのか
1 不動産の分割方法
不動産における遺産分割の方法として考えられるのは以下の3つの方法です。
①代償分割
②換価分割
③現物分割
これらについて、以下解説します。
2 代償分割
代償分割とは、不動産の所有権を1人が相続し、その1人が他の相続人に対して、遺産分割協議にしたがった金銭を支払うという方法で行われる遺産分割の方法です。
例えば、3人の相続人がいて、1人が3000万円の不動産を取得する場合、その取得した人は残りの2人に1000万円ずつ支払うという方法で遺産分割を行います。
⑴ 代償分割の注意点1
この方法を取る際に注意するべき点は2つあります。
1つ目は、不動産の評価額に気をつける事です。
不動産を評価する方法としては、不動産会社に見積りを取る方法、固定資産税評価額に基づく方法、路線価に基づく方法等があります。
どの方法で不動産を算定するとしても、不動産を相続する方からすればなるべく安く見積もれる方法を選ぶように話を持っていく事が得策ですし、他方、代償金を受け取る側からすればなるべく高く見積もれる方法を選ぶようにしたいところです。
一般的には、固定資産税評価額に基づく値段が安く、不動産会社に基づく値段が高くなる傾向にはあります。
しかし、実際の事案によって異なる場合も多いので、必ず全ての金額を把握した上で決定するのがよいかと思います。
⑵ 代償分割の注意点2
2つ目の注意点として、不動産を取得する人は、現金を持っている必要があります。
上記の例だと、不動産を取得する人は2000万円の現金を用意しておく必要がありますが、このような大金を持っている方はそうそういないでしょう。
そのため、被相続人の方が生命保険を用意しておくなどの事前の対策を行っておく事も必要となります。
3 換価分割
換価分割とは、相続した不動産を売却して、その金銭を遺産分割協議にしたがって分けていくという方法です。
この分割方法を取る際に注意すべき点としては、不動産譲渡所得税と不動産会社の仲介手数料が発生するという点にあります。
不動産譲渡所得税とは、不動産を譲渡した際の売却益に対して発生する税金であり、不動産を所持していた期間が5年を超える場合には約20%、5年以下ならば約40%になります。
仲介手数料は、不動産の売却価格に対して約3%の報酬として支払うことが多いです。
これらの費用に加えて、専門家への依頼費用等も発生するため、総額でいくらの手出しが必要なのかを見積もってもらうようにしましょう。
4 現物分割
現物分割とは、土地や建物を分割して取得するという方法による分割です。
例えば、300㎡の土地を2人の相続人で半分に分割して相続するという方法が挙げられます。
この方法を行う注意点としては、分割した後の土地が同額とは限らないという点にあります。
例えば、角地にある土地を分割する際に、1つの土地は2つの道路に面しているが、もう一つの土地は1つの道路しか面していないという場合には後者が低くなる事があります。
そのため、分割後の土地の状況等を勘案して現物分割を行っていく必要があるといえるでしょう。
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