任意保険の保険会社が算定する示談金の傾向について、教えてください。
1 保険会社の示談金の傾向
医療費、交通費などの実費は、実際に支出されたとおりの金額が算定されますが、慰謝料について、自賠責保険の基準による低い金額が示されることが多いです。
2 最低の基準としての自動車賠償責任保険
任意保険の保険会社は、保険会社から支払った金額の一部を、自動車賠償責任保険の保険会社に請求し、支払を受けることができます。
その際、自動車賠償責任保険から支払を受けることにより、任意保険会社が利得することは許されないことになっています。
言い換えると、任意保険会社は、自動車賠償責任保険の基準以上の金額を支払うこととされています。
3 任意保険会社による損害額の算定
損害額の算定をするに当たり、治療期間などに争いがない場合(賠償額の算定の前提となる事実に争いがない場合)、医療費や交通費など実際に支出した金額は、支出した金額がそのまま算定されます。
ただし、後記のとおり、過失割合により減額される場合があります。
これに対し、慰謝料については、自動車賠償責任保険の算定基準による慰謝料と、これ以外の基準による慰謝料との、いずれかの金額が支払われることが多くなっています。
多くの場合、自動車賠償責任保険の算定基準による慰謝料の方が金額が低くなるため、最初に保険会社より提示される金額は、自動車賠償責任保険の算定基準による金額であることが多く、これを知らずにそのまま示談してしまうと、損をしてしまう可能性があります。
また、裁判の基準による慰謝料は、あくまで裁判所への訴え提起と判決を経た際に示される金額であり、訴え提起前に合意をして示談金の支払を受ける場合には、裁判での基準から少し割り引いた金額となることが一般的です。
4 双方に過失がある事故の場合
双方に過失がある場合、裁判での基準では、必ず過失割合に応じた減額(過失相殺)がされますが、自動車賠償責任保険の場合は、被害者の過失割合が7割以上となった場合を除き、過失相殺はされません。
このため、まれに、自動車賠償責任保険の基準により算定した方が有利な金額となることもあります。
例えば、過失相殺前の金額について、裁判での基準が100万円、自動車賠償責任保険の基準での金額が80万円とされた状態で、3割の過失相殺がされるとした場合、裁判での基準による支払金額は70万円となり、自動車賠償責任保険の基準による80万円を下回ることとなります。
5 弁護士に相談するメリット
相手方保険会社が提示する示談金の金額が妥当かについては、医療費などとして支出された金額の確認のほかに、事故状況の確認ひいてはこれに基づく過失割合の検討が必要となる場合もあります。
このため、遅くとも保険会社と示談する前に、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。
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